Zodiac

ヨーヨーファクトリーの新作、Zodiacが8月14日に発売します。2018年に発売されたコンフュージョンシリーズの流れをくむ最新版。

元ネタを意識したゴールドとブラックがラインナップ

コンフュージョン(Confusion)という意味は混乱という意味でなぜこのヨーヨーの名前になっているかと言うとヨーヨーファクトリーのオーナー、YoHansが最初に起こしたヨーヨーブランド、Playmaxx社(プロヨーなどで有名、後にダンカンに売却)が末期に作っていたコールドフュージョンというヨーヨーのオマージュになっているからです。形が似ているだけではなく、ダンカンに販売したヨーヨーがヨーヨーファクトリーから出るカオスな混乱、という意味もあると思っています。実際ダンカンがコールドフュージョンを再販しようとしていた計画に若干の狂いが生じました(笑

オリジナルのコールドフュージョン ヨーヨーWikiより引用

コンフュージョンはEDC(EveryDayCarry,毎日持ち運ぶの意、転じて普段使い)カテゴリのヨーヨーとして発売されていました。

OneDropのDeepStateCore.Co.のアレーキャットに代表される”人を選ぶ”系のEDCヨーヨーに比べると幅も広く、丸い持ち心地は初心者に優しく、メジャーブランドとしての”責任”のようなものの中からできることを絞り出した感じがありました。DV888を薄型ベアリングをつかって、引き戻の推奨をすることに比べるとサイズAの引き戻しのほうが納得の行く構成でした。

ヨーヨーファクトリーが立ち上げ段階のレッドアラートからプレミアムラインに移行していた時期の定番、チームカラーエディションなどもあり、迷走していたPlaymaxxの後期を覚えていて、ヨーヨーファクトリーが復活してからの今とは違うプレミアムブランドとして人気を博していた時期を知っている人からするとコンフュージョンは”熱い”ヨーヨーだったのですが、残念ながら商業的にはヒットしませんでした。

軸回りのバンプの形状など、”意味のない段差”が当時のコールドフュージョンの形状を模していて面白い、と思えないとまったく響かないヨーヨーかもしれません。

続いて、コンフュージョンシリーズに位置づけてもいいであろう888GTの例のカラーが出たときは元チームプロヨーの”中の人たち”の思い入れを感じてヨーヨーが好きで会社を起こした人たちだなぁと感心していました

もし当時これがあれば、のコールドフュージョンとハブスタックを組み合わせた888GT

コンフュージョンが商業的に失敗した原因は、サイズAベアリングでパッドが厚かったので引き戻しが必須などスペック的な原因もあるかと思いますが、一番の要因は引き戻しでメタルを遊ぶニーズがいまの市場に殆どなかった、というところにあると思います。

ヨーヨーを販売することを生業とする競技ブランドを運営していると、作りたいものと求められているもののギャップがあり、直径56mmのバイメタルで、長く回って、動かしやすくてホリゾンタルがやりやすいサイズC以外のヨーヨーはビジネス的にも反応も良くないため、手がけないのが正解、という結果になっています。

ではなぜそれでもヨーヨーファクトリーは変わったものを作り続けるのか。

メーカーからしたら何を作っても定番のモデルを超える売上は無いのをわかりつつ、マーケティングとしては、新作を作り続けないといけない。でも実際に会社を支えているのは定番モデルというディレンマもあるのかと思います(あくまでも推測です)。ユーザーのニーズが市場を作り、メーカーに影響を与えるのは当たり前ですが、ヨーヨーに関してはいわゆる”売れ筋”が一つのニーズに集中していて、多種多様なモノ作りをしていきたい気持ちがあると閉塞感がないわけでもありません。

ほぼ毎月新作をリリースしているヨーヨーファクトリーの中でも年に2,3機種、主流からそれているヨーヨーが発売されています。

競技用モデルはトレンドがあり、その中で作り続けてヒットしたら継続、失敗したら1ロットで終了、というスタンスで量産を続けていけばよいのですが、ニーズから生じたモデルではない、メーカー側からのメッセージ性のあるヨーヨーにこそ、メーカーの本音が隠れているのだと思っています。

フリースタイルヨーヨーで戦うことを追求したモデルが氾濫する市場に、足を止めてもう一度ヨーヨーを始めた頃の楽しさを思い出して、回転性能とか滑りとか動かしやすさでヨーヨーを語るのをやめよう、というメッセージが込められているのがこのシリーズだと思います。

競技シーンで圧倒的な存在感を見せつけるヨーヨーファクトリーがマーケティングのための競技モデルと本当に自分たちがやっておきたいラインナップを使い分けているとしたら面白くないですか?

実際公式の文章でも夏のヨーヨーとして、スペックを語らないで気楽に行こう、という説明でヨーヨーのレビューを打ち切っています。

前置き長くなりましたが比較写真


単体の写真だと気が付かないですが、直径57.7mmの直径の大きさは握ってみてわかります。

中ぐりされているリム。外周に重さが集まってません(この直径で集めると重量オーバーになる)

幅が広くて直径が大きいけど重さは64gということで”回らない”ヨーヨーに仕上がっています。リムが丸いことに加え中ぐりされているので重量配分としては全体に行き渡っている感じです。サイズAのコンフュージョンはしっかり回っていましたが、Zodiacはいい感じで回りません。このことで回転に引っ張られて集中しないとコントロールできないヨーヨーではなくて、気楽に振り回すEDCヨーヨーとしての良さがでてきます。第一線の競技用ヨーヨーブランドが”低性能”なメタルヨーヨーをあえて作っていることの意味。

またサイズCのセントラを標準装備し、グリスアップして使うことを推奨しています。直径の大きいベアリングと適正なギャップのもたらすストリングの解けていく感覚はこのヨーヨーの魅力です。正直、バインド状態ではこのヨーヨーの魅力を発揮することはできず、また付属の薄型ベアリングではフルサイズよりもさらに回らないので同じく、良さが打ち消されてしまいます。(なぜ薄型が付属しているのかと問い詰めたい。1Aプレイヤーはグリスをもってないから?)初期状態がバインドなのはメンテをしない世代が拒否反応を起こすの抑えてオールドスクールプレイヤーは自分で調整してくれ、というメッセージかと思ってます。

バインドで使うにしてもギャップが狭いのでどちらにしろバインド競技スタイルで使うヨーヨーではありません。

回転があまりない恩恵はヨーヨーのコントロールがある程度できている中上級者ではないと感じることができないので初心者向けのような作りでいて実は人を選びます。とはいえメージャーメーカーらしく、薄型のとんがったモデルではなく、幅の広い緩やかなリムで楽しく遊ぶことも忘れていません。

グリスアップをきちんとできれば、一部の人には使い込めるお気に入りになり得るモデルなのでコンフュージョンを見送っていた人も2020年のEDCメタルのトレンドがきちんと取り入れられているZodiacは手にしておいて欲しいモデルです。

コレクションモデルではなくてこのヨーヨーをポケットに入れてひと夏、いろいろなところに出かけて使い込んで、傷だらけにしながらヨーヨーと他の遊びで楽しんで欲しい、というのがメーカーの想いではないかと思います。それがヨーヨーの楽しさだよと。